神話 mythic
神話とはもちろんおとぎばなしとは異なる。神話とは、ある一つのカテゴリーに属する事柄を、実は他のカテゴリーが適当であるような表現の中で提示することである。したがって神話をあばくことは、事柄そのものを否定することではなく、その事柄の位置を改めて正しく定め直すことである。
ごく簡単に考えると、特定の神話について、読者や視聴者がある程度の知識を持っており、それについて一定の世界観を形成していれば、それを想起させるようなイメージを作品に挿入することで、作品自体の世界観に共鳴させることができる、ということだろう。
神秘的な雰囲気とか、神々しい荘厳さとか、近代人の失った想像力とか、生き生きした自然との近さとか、いろいろな言い方ができるだろうが、比喩や記号の観点から言うと、近現代人の世界観と違って、神話的世界観では比喩と比喩されている実体、虚構と現実の間の境界線が流動的であるように見えるということがあるだろう。
自然界の異変を、自分たちの社会に何か事件が起こる兆候と見たり、社会的な掟を破ることが、超自然的な存在の怒りを買うと信じ、その怒りを鎮めるため、神や精霊を象った祭具による儀礼を行ったりする。